吉澤 遼馬

2022年9月30日

Runnners Kneeの運動療法

最終更新: 3月24日

膝関節に関しては多くの方が悩みをお持ちではないでしょうか??
 
みなさんのクライアント様の中にも膝関節に悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか??

今回僕はランナーズニーについて解説していこうと思います!!
 
まずはランナーズニーとは何か確認していきましょう!!
 

 

目次

  1. ランナーズニー概要

  2. 鑑別

  3. 類似疾患

  4. 膝蓋大腿関節障害(PFPS)とは?

  5. 対処計画

  6. 環境的な要因

  7. ランニングフォーム

  8. 運動療法

  9. 大腿筋膜張筋リリース

  10. 大腿四頭筋リリース

  11. 壁SLR

  12. ヒップサークルストレッチ

  13. 後縦隔ストレッチ

  14. ヒップリフト

  15. ヒップリフトアブダクション

  16. チューブウォーク

ランナーズニー概要

ランナーズニーとはその名の通りマラソンやランニングなどを多くする方に多く発生する障害です。

ここ最近、リモートワークが増えて運動不足解消の為ランニングをする人が増えましたよね!!

ランナーズニーでは「大腿筋膜張筋」「大臀筋」の2つの筋肉が姿勢不良や股関節の柔軟性や機能性の低下から日常生活動作などの要因が加わり、大腿筋膜張筋のラインに沿って痛み、しびれを引き起こします。

この状態が続くことによってあらゆる日常生活動作にも影響を及ぼし、歩いているだけやひどい場合、脚を地面につく動作だけでも痛みが出るようになってしまいます。

そうなってしまうと、何をやるにも億劫になってきて身体的だけでなく精神的にも影響が出そうですね。特に今の時代では・・・


 
先ほどもお伝えしましたが、ランナーズニー(腸脛靱帯炎)の原因はマラソンやランニングで膝の屈伸運動を繰り返すことによって大腿筋膜張筋の遠位部の腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生します。

マラソンなどの長距離ランナーやランナー・サイクリスト・ハイカーに、好発しますが、ほかにもバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ、ウェイトリフティングなど様々な競技で発生します。

膝関節中立位の場合、腸脛靭帯は大腿骨の隆起(外側上顆)の前方に位置しています。膝関節を屈曲させる際、腸脛靭帯は外側上顆の後方に移ります。

この膝の曲げ伸ばしによって、腸脛靭帯の後方部分とその下の外側上顆が擦れます。

膝の曲げ伸ばしを繰り返し行うマラソンやランニング運動では、腸脛靭帯が繰り返し外側上顆に擦れて刺激され、そのストレスが限界に来て腸脛靭帯に炎症が起き痛みが出てきます。

要するに膝を酷使するスポーツでも発症することが多いということです。

発生の要因はほぼほぼオーバーユースです。過剰なランニング時間やランニング時の走行距離、柔軟性不足(ウォームアップ不足)、疲労の過剰な蓄積、

アスファルトなどの硬い路面や下り坂、アウトソールの硬いシューズ、下肢のアライメント不良(内反膝)など、さまざまな要因が想定されます。

それに一つとは限らず、いくつかの条件が組み合わさっていることもあります。

ただ僕の経験上、股関節の柔軟性不足と骨盤、体幹の安定性欠如が大きく影響していると思います。

鑑別

ランナーズニーの鑑別方法は膝外側の圧痛、運動時痛。スペシャルテストのよる症状の誘発方法(grasping test)を行います!!

grasping testは膝を90度屈曲して外顆部で腸脛靱帯を押さえてから膝を伸展していくと、疼痛が誘発されるテストです。こちらがかなり有用です。

レントゲンやMRIでも著明な変化はほぼありませんので、ここではしっかりとgrasping testを実施しておきましょう!!

類似疾患

ランナーズニーに似た障害もいくつかあるので軽くですが確認しておきましょう!

膝関節外側部での疼痛といえばそれを主症状とする、外側半月板損傷との鑑別が必要です。

膝内側で同様にマラソンやランニングなどで起こる障害があります。それは鵞足炎です。こちらも原因は主にオーバーユースです。

また膝関節周囲で痛みを発生させる障害、膝蓋大腿関節障害(PFPS:
 
Patellofemoral Pain Syndrome)についても軽く触れておきましょう!!

膝蓋大腿関節障害(PFPS)とは?

膝の前面を保護している膝蓋骨の裏側や、膝蓋骨周辺の痛みのことを膝蓋大腿関節障害(PFPS)と呼び、AKPS(Anterior Knee Pain Syndrome)と同義にされます。

PFPSもマラソンランナーやランニングをする方に最も多く見られる障害のひとつです。膝に負荷がかかりすぎた後に発生するもので、

膝関節の屈伸動作(スクワット、階段や坂道を使ったトレーニングなど)を繰り返し行うことで膝関節にストレスが生じ引き起こされます。

症状は典型的に膝蓋骨の内側や、周囲に鈍痛や刺激性のある曖昧な痛みとして現れます。ほとんどの場合において、走ることにより悪化するのですが、何時間もじっと座った後にも起こることもあります。


 
対処計画

ランナーズニーに限りませんが、先ずはドクターと相談をして、痛みの具合や現状どの程度まで動かせるのか、荷重できるのかを確認しながら、競技復帰を目指してトレーニングを行きましょう。

またこの障害を起こさないためにも急激に走るスピード、距離が増えないように、水中歩行、水泳、自転車など着地衝撃がないものから始め、

ウォーキングから、軽めのジョグへと移行し、少しずつジョグの距離を増やしてゆきます。

もちろん終了後は、十分なアイシングとストレッチングでケアを行ってください。

環境的な要因

ランナーズニーに関しては環境の要因もかなり影響します。競技復帰に向けたトレーニングの段階では、硬い路面や坂道を避けるようにしてください。

特に、下り坂は下肢への負担を増大させますので、コース設定には十分に注意する必要があります。

またできるだけ広い公園や、芝や土の上を走るようにしましょう。痛みが強い時期は水泳や水中歩行、自転車によるトレーニングで体力の低下を最低限にします。

最初の方は自転車で様子を見るのが無難ですね!!

前述の通り腸脛靱帯は脚の外側にあり、身体が外側に振れるようなストレスにより、膝の上の大腿骨の外側とこすれて痛みを発してしまいます。

舗装された道路は雨水の排水を考慮して外側が低くなるように作られています。なのでランニングを行う際には、低くなっている側=道路の外側はその外側へのブレが大きくなる可能性が高くなります。

つまり、常に道路の右側を走った場合、常に身体が右に傾斜した状態で走ることになります。

陸上競技場のトラックも同様で、コーナーでは外側にストレスがかかります。トラックでのトレーニングに慣れていない方は徐々にトラックでの練習量を増やし、可能であれば反対方向に走るトレーニングも取り入れてください。

ここまで気を使えたらかなりクライアント思いですよね!!

こういうことって意外と大事なんですよね。

昔のクライアント様の話ですが、頸部の痛みがひどいということで来館された方がいて、ストレッチやトレーニングで帰る頃には来た時よりもよくなっているのですが、

なかなか改善されなく、うーんメニューがよくないのかなーと見直してみようかと思い、クライアント様と相談しているときに、僕の話を聞いている時のクライアント様の話の聞き方でハッ!!としたのですが、

そのかたは、話を聞く際に、毎回細かく頷くんです。1分間に50回以上は頷いていたのではないでしょうか。

なので僕は、その方に取り敢えず頷くのやめましょう!!と言ったところ次のトレーニングの時には今まで気になっていた頸部の痛みは無くなっていたんです。

ですので、こういう些細で細かいことも意外と重要なんです!!

またシューズ選びやインソールの種類によっても症状が出たりするので、シューズに関しては自分にあったものや環境に適したものを選ぶようにしましょう。


 
ランニングフォーム

ランナーズニーにとってどんなランニングフォームで走るかもとても重要になります。

理想的なランニングフォームの獲得により、身体への負担を軽減させて走ることができます。常に重心を高く保ち、足の着地を適切に行い、無駄な方向へのブレがないように意識することが大切です。

そのためには立位姿勢を適切にし、安定させる事が大事です。また、バランスディスクやハーフポール等を用いて片足での安定した状態を獲得し、立位姿勢を安定させ歩行します。

前回の足部の記事でも書きましたが、足でバランスを取ることが私たちにとってとても重要になります。

足でバランスが取れないと、それを膝関節、股関節で代償してしまい付近の筋肉を過剰に使用してしまい、オーバーユースでランナーズニーの原因の要素になってしまいます。

選手の場合は、その事実をコーチや監督に共有する必要がありますが、普通はそこまでしないので私たちセラピスト側で調べておく必要がありますね!!

歩行で体幹や骨盤にブレやズレが生じているのであれば、ランニングではそれ以上に衝撃も勢いもついているので余計体に負担になるわけです。

なので、歩行改善もランナーズニーの予防に大事になってきますね!!


 
運動療法

ではここからはランナーズニーの運動療法を紹介していきたいと思います!!

まずはランナーズニーの原因となる筋肉たちへアプローチしていきます。

患部への負担を減らすため原因となる筋肉のストレッチングを行います。

それは以下の筋肉になります。

・大腿筋膜張筋
 
・大臀筋
 
・ハムストリングス
 
・大腿四頭筋
 
・脊柱起立筋

これらの筋肉たちの柔軟性が低下するとその先にある腸脛靭帯の張りが強くなり、大腿骨外側上顆との摩擦が強くなり、炎症を起こす原因となります。

今回はみなさんも承知かと思いますがストレッチポールとボールでのリリースと呼吸を使ったストレッチをご紹介します。

大腿筋膜張筋リリース

①ストレッチポールを使用。もしなければテニスボールでも可()内にテニスボールバージョンを記載
 
②ストレッチポールを横に置き、大腿部の側面を当てる(ASISに示指の指腹あて指が重なるように腰に手を置いた部分にテニスボールを置く)
 
③ある程度転がして痛みが強いところで膝の屈曲伸展を行う
 
→③3面行う。真ん中、やや前面、やや後面


 
大腿四頭筋リリース

①写真のように大腿部前面にストレッチポールを当てる
 
②全体にポールが当たるようにしっかり体重をかけて転がす
 
③一番痛みがある場所で膝の屈曲伸展を5回行う

壁SLR

①脚のかけられる場所に片足だけかける。もう一方の脚はまっすぐ伸ばす
 
②ストレッチ側の臀部が床からはなれにように注意しながら行う
 
③ある程度ハムにストレッチがかかったら、股関節から大腿骨を外すように付け根を両手で押す

ヒップサークルストレッチ

①四つ這いになり、片方の膝の下に段差をつける為ヨガブロックなどを使用する。(タオルでも可)
 
②段差をつけた方に体重を偏らせ、臀部後方のストレッチ感を感じる。
 
③臀部後方のストレッチ感を感じたまま、臀部を時計回りに回転させる。(反時計回りも)
 
④10周程度行う

後縦隔ストレッチ

①正座をしてやや膝を開き、踵に臀部をつける
 
②鼻から深呼吸を行い、腰部後方に空気を入れる
 
③最大に吸気を行なってややキープし空気を吐き出す


 
次に、大臀筋と中臀筋を活性化していきます。この2つが機能低下すると股関節は内旋位になりやすく、大腿筋膜張筋に過度な緊張がかかってしまいます。

ヒップリフト

①写真のように、仰向け膝たて姿勢で腹圧キープ
 
②骨盤を後継するように腹直筋下部を使用して股関節伸展
 
③膝、骨盤、肩が一直線になるところまであげる

ヒップリフトアブダクション

①ヒップリフトの臀部を上げ切ったところがスタートポジション
 
②片足をあげ、骨盤が傾斜しないように股関節外転をしていく
 
③大腿四頭筋や大腿筋膜張筋ではなく中臀筋に刺激を感じる

チューブウォーク

①チューブを膝にまき、アスレティックポジションをとる
 
②チューブのテンションを落とさないように横方向に移動
 
③膝で慣れたら足首にして膝伸展位で行う

この後にSQや片足のデットリフト等を行い、片足動作を入れていきます。
 
プラス、バランスエクササイズを行い、1箇所に負荷がかからないように身体の使い方を練習します。

以上が、ランナーズニーの対する運動療法の導入部分になります。

春になり、暖かくなってきてランニングをされる方も増えてくると思いますので、ぜひ参考にしてみてください!!
 

 

参考文献
 
1.Gregory RW, Ann YM: Patellofemoral pain syndrome (PFPS): a systematic review of anatomy and potential risk factors. Dyn Med 2008; 7: 1-14 (open access).
 
2.Rodorig DMB, Theresa HN, Thiago BM, Cesar FA, Carlos DM, Fabio VS: Eccentric hip muscle function in females with and without patellofemoral pain syndrome. J Athl Train 2009; 44: 490-496.
 
3.Lori AB, Michelle C: An update for the conservative management of patellofemoral pain syndrome: a systematic review of the literature from 2000 to 2010. Int J Sports Phys Ther 2011; 6:112-125.
 
4.Naoko A, Phillip AG: Patellar taping, patellofemoral pain syndrome, lower extremity kinematics, and dynamic postural control. J Athl Train 2008; 43: 21-28.
 
5.Gross MT, Foxworth JL: The role of foot orthoses as an intervention for patellofemoral pain. J Orthop Sports Phys Ther 2003; 33: 661-670.
 
6.Watoson CJ, Propps M, Ratner J, Zeigler DL, Horton P, Smith SS: Reliability and responsiveness of the lower extremity functional scale and the anterior knee pain scale in patients with anterior knee pain. J orthop Sports Phys Ther 2005; 35: 136-148.
 
7.公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト3スポーツ外傷障害の基礎知識

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