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執筆者の写真吉澤 遼馬

【鵞足炎】"鑑別"と"筋膜アプローチ"



✅鵞足炎の鑑別



鵞足炎は膝内側の鷲足(縫工筋、薄筋、半腱様筋)の腱性付着部周囲に疼痛を訴える症候群とされており、その原因としては鵞足部に付着する膝屈筋群の付着部炎および同部の滑液包炎とされています。


臨床症状としては、

・鵞足炎部の圧痛 ・ランニングやサッカーなど鵞足部への繰り返す負荷による疼痛 ・階段昇降時などの膝内側部痛

などを訴える方が多いです。


膝内側部に疼痛を認める場合は、内側半月板損傷や、内側側副靭帯損傷との鑑別も必要です。


今回は、この「鵞足炎」の因子となっているトリガー筋を予測するための徒手検査をご紹介します。





トリガー筋鑑別テスト

☑️薄筋

方法: ①患者の股関節を外転・伸展位とする。 ②他動的に膝関節を伸展する。 陽性判定:疼痛が誘発されれば、薄筋が疼痛の原因と判断する。


☑️半腱様筋

方法: ①患者の股関節を内転・屈曲位とする。 ②他動的に膝関節を伸展する。 陽性判定:疼痛が誘発されれば、半腱様筋が疼痛の原因と判断する。


☑️縫工筋

方法: ①患者を側臥位にし、股関節を内転・伸展位とする。 ②他動的に膝関節を伸展する。 陽性判定:疼痛が誘発されれば、縫工筋が疼痛の原因と判断する。



なお、薄筋と半腱様筋、縫工筋のうちどの筋肉がトリガーになりやすいかについては以下のように報告されています。


17例中、最もトリガー筋として同定されたのは薄筋単独であり13例に認められた。縫工筋単独は2例に認められ、薄筋と縫工筋の合併は2膝に認められた。 [引用] 赤羽根良和, 林典雄, 橋本貴幸, 中宿伸哉, 大久保佳範, 竹中良和, 笠井勉吉田整形外科病院:理学療法学 29(suppl-2): 285-285, 2002.



✅鵞足炎と筋膜の関係


まず、鵞足炎の痛みのメカニズムを考えていきます。


基本的な考え方のとしては、

鵞足構成筋は下腿筋膜に付着しており、筋収縮により下腿筋膜の緊張を増加させる 腓腹筋の筋力が低下していると、鵞足構成筋が過剰に収縮して下腿筋膜の緊張を増強させる 腓腹筋の筋力低下を代償 鵞足炎を惹起

上記が原因の1つとして考えられています。


つまり、鵞足炎 または それに類似した痛みを改善させるためには、鵞足に関与する下腿筋膜の機能障害を改善させることが1つの手段になると言えます。


では、具体的にどこのポイントへアプローチすればいいのか?

それは、



です。


なぜこのポイントかというと、

・後脛骨筋は下腿深横筋膜に挿入する。 ・下腿筋膜の内側は、縫工筋・薄筋・半腱様筋及び、半膜様筋腱によって補強される。 引用:引用:Carla Stecco 筋膜系の機能解剖アトラス 医歯薬出版 2018 p342

つまり、後脛骨筋上の筋膜が機能障害を起こすと、下腿筋膜の機能障害を招き、鵞足炎を引き起こす可能性があると解釈できます。




✅筋膜の評価方法

では、具体的にどのように評価を行えばいいのか?

それは、



ことです。


▼実際にはこんな感じ



皮膚の上を滑らすように丁寧に触っていくと

高密度化を起こしているケースでは、皮膚の動きまで悪く固まっているようなポイントがあります。

そこを少し圧迫してフリクションした時に痛みを訴えるような場合はそこの筋膜が硬くなっていると判断します。



✅筋膜への具体的なアプローチ方法


では、これに対し実際にどういうアプローチをしていけばいいのか?

それは、



ことです。


▼実際にはこんな感じ



正しくアプローチできていると、「ごりごりした感じ」と「痛み」があります。

その固さと痛みが取れるまで3分程度続けてみてください。


このアプローチは、深筋膜に対し機械的刺激と炎症反応による熱刺激を加えてヒアルロン酸の状態を変えるので、

かなりの痛みを伴います。


なので、アプローチはマイルドに行ってくださいね。

また、アプローチの目的と理由をしっかりと患者さんに説明し、同意を得てから介入してください。


さて、このアプローチを行ったら前後でトリガー筋鑑別テストなどの症状の変化をみてみてください。

これで改善がみられるようであれば、数回に分けて介入を続けて症状の改善を目指します。(1回の介入で取り切るのは難しいです。)




✅まとめ

・鵞足炎の鑑別は

・トリガー筋鑑別テスト

を用いる。


・鵞足炎の改善には

後脛骨筋上の筋膜

にアプローチすると有効なケースが多い。


✅最後に


このnoteで、

◆鵞足炎に対する鑑別方法がよくわかってなかった ◆鵞足炎に対する治療戦略が立てられていなかった

こんなセラピストの方々のお役に立てたら嬉しいです。

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