吉澤 遼馬

2022年12月31日

運動療法でできる頭痛へのアプローチ

今回は頚椎の運動療法を頻繁に使っている、頭痛に対しての運動療法をご紹介していこうと思います!

昨今、在宅ワークや電子機器の流通、ストレスフルな生活環境によって、頭痛の罹患率が相当高くなっていると感じています。そんな頭痛に対して、手技や鍼を用いて改善させるのはある程度できると思いますが、その頭痛に対してのセルフケアを患者さんに指導出来たら、こんな患者思いなことは他にないですよね!
 

頭痛の分類やメカニズム、それに対しての運動療法を記載していきますので是非ご覧になって参考にしていただければと思います。

それでは、さっそく記事に取り掛かります!

目次

☑頭痛の分類

〇SNOOP

〇FAST
 

☑頭痛について

〇緊張型頭痛

〇片頭痛
 

☑頭痛に対する運動療法

〇頭痛体操

〇筋電図バイオフィードバックから考えられること

 ・Deep neck flexor - Longus colli strength-

〇セロトニン体操??

 ・ウォーキング

 ・咀嚼運動
 

☑まとめ
 

☑参考文献


 

☑頭痛の分類

まずは運動療法が適応になるのかどうかということを考えなければなりません。

そのため、最初に頭痛について説明していきます。

分類は大きく3つに分かれており、細かく分けると14種類あると言われています。
 

●一次性頭痛
 
1.片頭痛
 
2.緊張型頭痛
 
3.群発頭痛及び三叉神経自律神経性頭痛
 
4.その他の一次性頭痛


 
●2次性頭痛
 
5.頭頚部外傷
 
6.頭頚部血管障害
 
7.非血管性頭蓋内疾患
 
8.物質またはその離脱による頭痛
 
9.感染症
 
10.ホメオスタシスの障害
 
11.顔面や頭蓋構成組織の障害に起因する頭痛
 
12.精神疾患


 
●その他
 
13.頭部神経痛及び顔面痛
 
14.その他の頭痛
 

この中で、慢性頭痛の診療ガイドラインにおいて、運動療法が関係する介入で推奨グレードがB以上のものは緊張型頭痛に対する、
 
『頭痛体操』
 
『筋電図バイオフィードバック』
 
になります。これらは後ほど説明していきます。
 

しかし、質の高い研究が行われていないだけ効果があるものもあります。
 
例えば、鍼灸や頚部のストレッチ,リラクゼーションなどこれらは推奨グレードがCとなっていますが皆さんも改善した経験がありますよね?
 

病態と介入の機序が分かれば改善法が見出せるかもしれません。
 
今回は運動療法関係の介入で推奨グレードの高いものがある緊張型頭痛と介入の余地がありそうな頭痛について解説していこうと思います。

それと忘れてはいけないのは、リスク管理の点です!!
 
1次性と2次性の鑑別をできるようにしておくことが非常に重要です。

〇SNOOP

こちらは1次性頭痛と2次性頭痛の簡潔で分かりやすい臨床的手掛かりになっています。
 
・Systemic symptoms/signs(全身症状:発熱,筋痛,体重減少)
 
・Systemic disease(全身疾患:悪性疾患,AIDS)
 
・Neurologic symptoms or signs(神経学的症状や徴候)
 
・Onset sudden(突然の発症:雷鳴頭痛)
 
・Onset after age 40 years(40歳以降の発症)
 
・Pattern change(パターンの変化:発作の間隔が短くなる,種類の変化)

〇FAST

こちらは脳卒中を疑う際に用いる簡単なテストです。
 
・Face(顔の左右差)
 
・Arm(片腕に力が入らない)
 
・Speech(呂律が回らない)
 
・Time(即医療機関へ!!)

患者さんに違和感を感じたら、然るべき行動をとりましょう!!

☑頭痛について

〇緊張型頭痛

緊張型頭痛はさらにここから分類分けがありますが、今回は大きく緊張型頭痛として解説していきます。

判断基準としては、
 
A.緊張性頭痛の中の分類分け(今回は記載なし)
 
B.頭痛は30分~7日間持続する
 
C.頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
 
 1.両側性
 
 2.性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
 
 3.強さは軽度~中等度
 
 4.歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
 
D.以下の両方を満たす
 
 1.悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
 
 2.光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
 
E.その他の疾患によらない

以上のBからEを満たすものとされ、Aでより分類分けがされるとしています。

メカニズムとしては、一定のコンセンサスが得られていないのが事実です。
 
しかし、筋電図バイオフィードバックや頭痛体操で改善がみられるということは少なくとも筋緊張や筋緊張の原因となる中枢の問題は関与しているのではないかと考えられます。

・末梢性神経要素
 
所謂、筋緊張が直接関係するのはこれになります。

大後頭神経の走行を見てみるとC2後枝である大後頭神経はC1/C2間から出て、下頭斜筋の下をくぐり、後頭部において頭半棘筋と僧帽筋上部線維の付着を貫き表層に分布します。

このことから頭半棘筋と僧帽筋上部線維の緊張が大後頭神経のスライドやストレッチに影響を出すのではないかと考えられます。

・中枢性神経要素
 
中枢神経系の問題により、交感神経性血管収縮や三叉神経や大後頭神経の感作が起こっているのではないかと言われています。

三叉神経求心性神経の経路を考えると、三叉神経脊髄路核があるC3まで下りてきており大後頭神経の高位であるC2とも中枢でつながりを持っています。三叉神経と頚髄は相互にオーバーラップしながら密接に関わり合い一つの核を形成しています。

また、頚神経は上頚神経節や星状神経節などと感覚神経の連絡をしていることからストレスに対して敏感に反応することが考えられます。


 

〇片頭痛

片頭痛もここから分類分けがされており各判断基準がありますが、今回は大きく片頭痛として特徴的な症状をあげるとしたら
 
・片側性
 
・拍動性
 
・強さは中等度~重度
 
があげられます。

様々なメカニズムが言われていますが、その一つに緊張型頭痛と同様三叉神経が関与し、セロトニン受容体との関係があると言われています。

片頭痛の痛みの発生は脳血管周囲の三叉神経終末の活性化によってCGRPの放出が促進され血管周囲に神経原性炎症が惹起されることによるとされています。

このCGRPの放出を脳血管の三叉神経終末上に存在するセロトニン受容体が作動することにより抑制します。また、片頭痛の薬として知られているトリプタン製剤もこのセロトニン受容体に作用し、効果が期待できるとされています。

すなわち、セロトニンに関係する行動が必要ではないかと考えられます。


 

☑頭痛に対する運動療法

上記のようなメカニズムから後頭下及びC1~C3の負担や過度なストレスによるセロトニン減少を起こさないということが頭痛に対する介入ではないかと考えています。

今回はガイドラインで推奨グレードが高いものと、考察から効果があるだろうと考えられるものを運動療法としてご紹介していきます。
 
・頭痛体操
 
・筋電図バイオフィードバックから考えられること
 
・セロトニンについて

〇頭痛体操

頭痛体操はガイドラインでは推奨グレードBとして紹介されており、片頭痛予防や緊張型頭痛の緩和に効果があると日本頭痛学会から紹介されています。

日本頭痛学会トップページ│日本頭痛学会日本頭痛学会は頭痛研究・医療をさらに発展させ、国民の疾病の予防・治療に貢献いたしますwww.jhsnet.net

パンフレットを見てみると、セロトニンを意識させているのかと思うような文章も書いてあるので面白いですよ!!(笑)
 
是非見てみて下さい!
 

 
体操はこんな感じです↓↓(パンフレットの言葉をそのまま使用しています)

・腕を振る体操(後頚筋を伸ばす)
 
軸を意識しながら!※エロンゲーション

・肩を回す体操(僧帽筋を伸ばす)
 
僧帽筋をたくさん刺激しながら大きく回す。

〇筋電図バイオフィードバックから考えられること

まず筋電図バイオフィードバックとは、
 
「筋電図により筋の活動電位を提示し、患者に筋緊張を自覚させコントロールを促す方法」であり、頭痛以外にも書痙や脳卒中患者などにも良く使われるようです。
 
緊張型頭痛に対する薬物以外の治療法として、推奨グレードAとされています。

頭痛では僧帽筋と胸鎖乳突筋に電極を貼り付け活動電位をフィードバックすることが多いです。
 
この2つの筋で結果が出ているということから頭痛を発生させ易い頭部や肩甲骨の動きを考えると、
 
・頚椎プロトラクション(FHP)
 
・頭部伸展
 
・肩甲骨挙上
 
になります。

この3つの動きを制御すれば、測定器が無くても良い結果が出せるでしょう。

まず必要な動きとしては胸椎の伸展、胸郭のアップライト、肩甲骨のリトラクションになります。

胸郭や肩甲骨の行為主体感が出てきたら、頚椎の運動療法に入るのが一番良い流れではないかと考えていますが、FHPや頭部伸展が胸郭や肩甲骨に与える影響も考えられるので、同時並行で運動療法を進めてもいいと思います。
 

・Deep neck flexor - Longus colli strength-

深部屈筋の活性と頭部伸展の修正をする運動療法です。

仰臥位で
 
・インプリント
 
・肩甲骨リトラクション
 
・頚椎リトラクション
 
を作ります。

まずこの姿勢ができていれば状態は良好です。
 
座位や立位でも行うようにしましょう!

次にこの状態で頭部,頚椎,胸椎と順番に挙げていきます。この時に頭部屈曲状態をキープしておきましょう。

この時に起こる代償動作としては肩甲骨のプロトラクションです。もし起こってしまった際は、起こっている動作を伝えて修正します。僧帽筋上部に力が入っているよということを伝えわからせることも行為主体感を掴むのに大事なことです。

肩甲骨上角ぐらいまで挙げたら次に胸椎,頚椎,頭部とゆっくりと床につけていき、元の状態に戻していきます。

常時、頭部伸展やFHPにスタックしている方は、この動作の途中に頭部伸展が入りやすいので、伸展筋の収縮が起きていること患者さんに教えてあげましょう。

また、プログレッションとして下顎の前突や開口をしておくと、開口筋でもあり、頭部屈曲筋でもある頚部前面浅層の筋群が頭部頚部屈曲に使われなくなります。
 
頚部前面深層筋が頭部頚部の屈曲に強く関与するようになるのでお勧めです。

〇セロトニン体操??

セロトニンは上記でも説明した通り、不足すると頭痛を引き起こします。
 
また、セロトニンは覚醒やサーカディアンリズムの調整、内因性疼痛抑制、
 
抗重力筋の活性等の機能もあります。
 
また、一般的には幸せホルモンとも呼ばれていますよね!!

では、セロトニン濃度を上げるにはどのような行動をすればよいのか。

・ウォーキング

特にサーカディアンリズムを考えた朝日を浴びながらのウォーキングが良いです。光が網膜上に映され、松果体でトリプトファンからセロトニンが合成される反応が起きます。
 
また、歩くというリズム運動が血中のセロトニン濃度を上昇させます。

・咀嚼運動

ガムを噛むことも血中セロトニン濃度が上がると言われています。
 
こちらもリズム運動として捉えられていますが、内側前頭前野の血流量も上昇しているため、三叉神経の刺激(咀嚼筋の活動)も一つの要因としてあるのではないかと考えられます。
 
※内側前頭前野とは、精神疾患と深くかかわっており、うつ病では血流量の低下が報告されています。

☑まとめ

今回は頭痛について、メカニズムの解釈から解剖学的、生理学的に運動療法を考えて説明してきました。

最初にもお話ししましたが、頭痛で一番最初にすることはリスク管理です。少なくともSNOOPとFASTは確認できるようになりましょう。

それから手技や運動療法と患者さんの状態やライフスタイルに合わせて、考えて介入できるようにしていくと、リスクも少なく効果的な介入ができるのではないかと思います。

また、やらされる運動療法は効果が出にくいです。特にセロトニンに関しては、主体性を持ったリズム運動が良いとされるので、運動をする意味や目的などを明確にして挙げるとより効果があると思います。

☑参考文献

・慢性頭痛の診療ガイドライン,医学書院,2013
 
・斎藤昭彦,頭痛の神経解剖学,理学療法科学11(4):207-209,1996
 
・上田泰久ら,大後頭神経の走行および圧迫・伸張部位についてー1例の肉眼解剖学的観察から得られた知見ー,第49回日本理学療法学術大会,2013
 
・有田秀穂,リハビリテーションにおけるセロトニン神経の役割,Jpn J Rehabil Med 2011;48:301-317
 


 

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