吉澤 遼馬
3月31日
目次
腰椎椎間板ヘルニアの鑑別
1、腰椎椎間板ヘルニアへの電気刺激療法
2、腰椎椎間板ヘルニアへの超音波療法
3、腰椎椎間板ヘルニアへの温熱療法
4、腰椎椎間板ヘルニアに対するその他物理療法
おまけ
最後に
・SLRテスト
感度が高い検査であり、SLRテストが陰性になるということは、腰椎椎間板ヘルニアは除外出来る疾患にあてはまるため、陰性ならヘルニアである可能性はかなり低くなります。
・末梢神経障害の鑑別
<方法>
患者臥位にて、SLRテストを行い陽性反応を確認できた角度で検査を行います。
その肢位を保持したまま足関節を底背屈し、疼痛の増悪・軽減を確認します。
底屈位で軽減し、背屈位で増悪した場合、末梢神経障害である可能性が高いです。
‐総腓骨神経
上記の股関節屈曲角度で足関節底屈と内反を加える。
‐脛骨神経
上記の股関節屈曲角度で足関節背屈と外反を加える。
‐腓腹神経
上記の股関節屈曲角度で足関節背屈と内反を加える。
腰椎椎間板ヘルニアに対する電気療法の狙う効果
・疼痛抑制
・炎症抑制
私自身、このような効果をイメージして電療を用いております。
では、実際どのようにアプローチをしているかを書かせていただきます。
大前提として、やり方は一例にすぎません。他によりいいアプローチ方法がありましたら是非ご教授いただきたいです。
①坐骨神経への疼痛抑制
【設定】
周波数 :100Hz〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:10μsec
時 間 :3分
患側を上で寝てもらい、パッド(アース)を症状の出ている末端に貼ります。
腰椎の椎間孔を開くイメージで腰椎を可能な限り屈曲し、椎間孔に向かって通電します。
②患部への炎症抑制
【設定】
周波数 :150Hz
パルス幅:10μsec
時 間 :1分
患側を上で寝てもらい、パッド(アース)を梨状筋上に貼ります。(画像は衣服の上から貼ってありますが、実際は皮膚に貼ってください)
腰椎の椎間孔を開くイメージで腰椎を可能な限り屈曲し、椎間孔に向かって通電します。
<番外編>
こちらはヘルニアに対するものではありませんが、鑑別した際に末梢神経障害による症状の場合に使用してみてください。
a.総腓骨神経アプローチ
【設定】
周波数 :5Hz バースト波形
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
パッド(アース)を症状の出ている末端に貼ります。
腓骨頭にまっすぐ当てて通電します。
b.脛骨神経アプローチ
【設定】
周波数 :5Hz バースト波形
パルス幅:30μsec
時 間 :1分
足根管付近にパッド(アース)を貼ります。
膝窩にまっすぐ当てて通電します。
c.腓腹神経アプローチ
【設定】
周波数 :5Hz バースト波形
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
下腿後面外側付近にパッド(アース)を貼ります。
膝窩から約4横指分したにまっすぐ当てて通電します。(下に図を入れてあります)
↑赤丸の位置です。
腰椎椎間板ヘルニアに対する超音波療法の狙う効果
・組織代謝の促進
・疼痛閾値の上昇
私は、超音波単体で使用するよりもハイボルテージとの併用によるコンビネーションを用いることがほとんどです。
理由は、超音波、ハイボルテージのどちらの効果も一度に作用させることができるからです。
しかし、発症直後の炎症期には超音波を使用しません。炎症を助長しかねないためです。
①患部へのアプローチ
【設定】
周波数:1MHz
duty :100%
出 力:1W/㎠
時 間:1〜3分
患側を上で寝てもらい、椎間孔に向かってまっすぐ皮膚に対してやや斜めに照射します。ほぼ動かさず、痛みや熱さを訴える場合はゆっくり動かします。(回転)
②患部 - 坐骨神経へのコンビネーションによるアプローチ
【設定】
<超音波> <ハイボルテージ>
周波数:1MHz 周波数 :150Hz
duty :100% パルス幅 :10μsec
出 力:1W/㎠ 時 間 :1分
患側を上で寝てもらい、パッド(アース)を症状の出ている末端に貼ります。膝関節伸展位にすると通電しやすくなります。
椎間孔に向かって照射します。
大前提として、温熱療法は発症直後の炎症期には行わないでください。症状を助長してしまう可能性があります。
腰椎椎間板ヘルニアに対する温熱療法の狙う効果
・組織代謝の促進
・軟部組織の粘弾性低下
・疼痛閾値の上昇
この辺りかなと思いますが、個人的に温熱療法を使用することがありません。
文献では、効果があったという報告もあるが詳細なデータがないのでなんとも言えません。ラジオ波とかどうなのかな…とか気になってはいます。
もし、温熱で腰椎椎間板ヘルニアの患者さんのアプローチをしてらっしゃる先生がいらっしゃいましたらご教授いただきたいです。
<番外編>
こちらはヘルニアに対するものではありませんが、鑑別した際に末梢神経障害による症状の場合に使用してみてください。
a.ハムストリングへのアプローチ
【設定】
出力:70%
RET使用
時間:10分
RETプローブ使用の場合
ブレスレット使用の場合
ラジオ波の施術後にストレッチを入れていただくとより効果的ですし、持続する印象があります。
(ここ1週間程度の実感ですので1つの考察程度に捉えていただければと思います)
腰椎牽引療法にて成果があるという報告がされていますが、ガイドラインでは慎重な選択をすべきとされております。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0017/G0000309/0038
個人的な見解として、鍼通電療法での成果が高い印象があります。
エビデンスとしても、置鍼より鍼通電の方が回数が少なく改善しているという報告もあります。
また、神経障害に対する神経近傍への刺鍼に関して、より障害部に近い部位(高位)に刺激した方が、障害部の神経血流に強い影響を与える可能性があるとされています。
実際に鍼灸師が行なっている施術です。急性期によりこの体制にしかなれなかった患者さんへ行なった内容です。
※高原が打ったわけではありませんので、誤解しないでください。(する方なんていないか…)
<梨状筋症候群へのハイボルト>
【設定】
バースト
周波数 :5Hz
パルス幅:10μsec
時 間 :1分
患側を上で寝てもらい、パッド(アース)を症状の出ている末端に貼ります。
梨状筋にまっすぐ当てて通電します。
その後、状態を確認してみてください。
楽になりました!!!!!笑
いかがでしたでしょうか。
腰椎椎間板ヘルニアは普段の臨床でよく遭遇する疾患の一つだと思います。
なんとなくわかっていたつもりでも、実際詳細まで理解していないことで患者さんに曖昧な説明やアプローチをしていませんでしたか?
"鑑別があって初めて介入"ができます。物療マガジンですので、もちろん物療での介入方法の紹介でしたが手技や鍼灸でも同じだと思っております。