吉澤 遼馬
2月29日
今回はセラピストの方なら誰しも一度は聞いた事のある『坐骨神経痛』に関して執筆させていただきます。一度は聞いたことがあるし、一度は診たことがある人が多いのではないでしょうか?
ただ、自分がなったことが無い!っという人も多いと思います。坐骨神経痛の症状の人に痺れや痛みの質問をすることが多いかと思いますが、そもそも、自分がなってないとどんな痛みや痺れかイメージが付かないのが当たり前です。
なので今回は、最低限の知識を持って施術に望めるような記事にしてます!
坐骨神経痛の重症度は、痛みの程度や神経障害の程度(麻痺の強さなど)によって決まるが、定型的な重症度分類というものはないです。
現在こんな悩みを持ってる方は是非みてください!
☑︎坐骨神経痛の方が来られた時に『分からない』と思ってしまう☑︎坐骨神経痛=ヘルニア・脊柱管狭窄症だ!と思ってる
☑︎今いる患者さんの為に知識を増やしたい
☑︎最近勉強出来ていなかった
では、早速本題に入って行こうと思います。
疾患情報
問診
アプローチ
文献情報
あとがき
自己紹介
-そもそも坐骨神経痛とは?-
坐骨神経痛とは、“坐骨神経に沿った痛み”であり、疾患名でなく、症状であり、一般に、殿部から大腿後面、下腿側面や下腿後面にかけての痛みである。
成人の38%が経験したことがあり、18−19%が現在症状を有している、との報告があります。
-坐骨神経の走行-
この辺りは皆さんもご存知だと思いますが、坐骨神経痛を来す代表的疾患には、腰椎椎間板ヘルニア(LDH)と腰部脊柱管狭窄(症)(LSS)があります。
・腰椎椎間板ヘルニアの疫学は不明です。
・腰部脊柱管狭窄(症)に関しては、40~79歳の日本国民の5.7%、約365万人存在することが報告されています。
LDH、LSSともに腰部神経根の圧迫や炎症を惹起することで坐骨神経痛を生じさせていると考えられています。
因みに、以前別の記事でも掲載しましたが
・ヘルニア=坐骨神経痛
・椎間板圧迫=坐骨神経痛
では無いので、ここは注意すべきポイントと思ってます。
30代の2人に1人は椎間板に異常が認められています。なので、『整形の先生に椎間板の異常って言われました』と患者さんから言われたら、この数字を示して安心させてあげてください!!
心の安心は慢性化を防ぐ非常に重要な要素の一つです
ここからはより具体的に話して行きます。
(推奨度2RS)
■重症度分類
重症度は、痛みの程度や神経障害の程度(麻痺の強さなど)によって決まるが、定型的な重症度分類というものはない。
■治療、保存療法の効果、リスクなどのエビデンス腰椎椎間板ヘルニアの場合、
1)薬物療法:高いエビデンスのある有効な治療はない、と報告されている。しかし、坐骨神経痛が出現して早期にNSAIDsを処方することは、痛みを慢性化させないためにも必要であると考えている。
2)神経ブロック:短期的には坐骨神経痛の軽減に有効である、というエビデンスがある。しかし、手術に至る症例を軽減させるというエビデンスはない。
■特徴的な診察法、画像所見脊柱所見が陽性の場合は、腰椎疾患による坐骨神経痛である可能性が高い。SLRTが陽性の場合は、L4/5、L5/S椎間板ヘルニアによる神経根障害の可能性が高い。Kemp徴候が陽性の場合は、腰部脊柱管狭窄による神経根障害の可能性がある。神経学的所見により、どの神経根が障害されているかを予測することができる。その後画像検査になる。画像所見:椎間板の突出や脊柱管の狭窄について評価する。
■リハビリテーションプロトコルリハビリテーションとしては、1)保存療法としてのリハビリテーション:腰椎牽引や腓骨神経低周波治療などの物理療法、麻痺がある場合の筋力強化訓練などの運動療法、がある。
2)手術療法後のリハビリテーション:麻痺がある場合の筋力強化訓練、歩行訓練、などがある。
ここでの問診は実施に私が意識しているポイントなどです。参考に出来るところだけ掻い摘んでもらって大丈夫です!
問診をしながらある程度目星が付けれるくらい知識があると、『ただ、話を聴く』から『目的を持って話を聴く』に変わります。
僕もそうでしたが知識が無いときは『なんとなくマニュアルだし聴く』みたいことが起こるので注意しましょう!
-問診-
①発症時期を確認する。
②誘因(重量物挙上、外傷など)を確認する。
③坐骨神経痛の発症後の経過(改善、悪化)を確認する。
④坐骨神経痛により具体的にどんな障害(長く歩けない、立っていられない、座っていられない、下肢に力が入らない、など)を感じているかを確認する。
⑤楽になる姿勢の有無を確認する(座ると楽になる、など)
⑥安静時痛や夜間痛の有無を確認する。
-診察-【ポイント】上記の診察により、坐骨神経痛を引き起こしている神経根を推定する。→この推定の力がめちゃくちゃ重要!
神経根の支配領域
【立位】
側弯を含めた脊柱変形の有無を視診で確認
↓
脊柱所見(脊柱を動かしたときの可動域、痛み誘発の有無)を確認
↓
棘突起の叩打痛をみる
↓
Kemp徴候をみる。この症状にて誘発される場合に坐骨神経痛を考慮する。
Kemp徴候
患者の膝関節の伸展を保持させつつ体幹を患側に側屈させたまま後屈させる。側屈した側の下肢痛(坐骨神経痛)が誘発された場合を、陽性とする。
【仰臥位】
下肢伸展挙上試験(straight-leg raising test、SLRT)を行う。
↓
SLRTが陽性の場合は、L4/5またはL5/S椎間板ヘルニアが疑われる。
↓
膝蓋腱反射(PTR)とアキレス腱反射(ATR)をみる。
↓
知覚障害の有無を確認する。
↓
徒手筋力テスト(MMT)で下肢の筋力を評価する。
下肢伸展挙上テスト(SLRT)
膝を伸展させた状態で、挙上させていく。下肢痛(坐骨神経痛)が誘発された場合を陽性とする。挙上角度については、一般に70°未満で下肢痛が誘発された場合を陽性としている報告が多い。陽性の場合は、L4/5またはL5/S椎間板ヘルニアが疑われる。
膝蓋腱反射(PTR)
a:仰臥位で行う場合、b:坐位で行う場合
下肢の徒手筋力検査
a:腸腰筋、b:大腿四頭筋、c:前脛骨筋、d:長母趾伸筋、e:長趾伸筋、f:長母指屈筋、g:長趾屈筋、h:下腿三頭筋
徒手筋力検査
筋力を表のように評価する。
【腹臥位】
アキレス腱反射をみる。
↓
大腿神経伸張試験(femoral nerve stretch test、FNST)を行う。腰部や殿部の圧痛の有無を確認する。
↓
FNSTが陽性の場合、L2/3やL3/4椎間での神経根障害が疑われる。
アキレス腱反射
a:腹臥位で行う場合、b:立ち膝姿勢で行う場合
大腿神経伸張テスト(femoral nerve stretch test、FNST))
腹臥位で膝を屈曲させ、股関節を殿部が浮き上がらないように伸展させ、大腿神経を伸張する。下肢痛(この場合、坐骨神経痛ではなく大腿神経痛)が誘発される場合を陽性とする。陽性の場合、L2/3やL3/4椎間での神経根障害が疑われる。
【鑑別疾患表】
■腰椎疾患
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄
・腰部脊椎症
・腰椎すべり症
・腰椎分離(すべり)症
・脊髄腫瘍(馬尾腫瘍)
■腰椎疾患以外
・梨状筋症候群
・梨状筋症候群以外の絞扼性末梢神経障害
・坐骨神経の神経鞘腫
・坐骨神経を巻き込む
【ポイント】
坐骨神経痛を来す代表的疾患には、腰椎椎間板ヘルニア(LDH)と腰部脊柱管狭窄(症)(LSS)がある。上述の診察により、坐骨神経痛を引き起こしている神経根を推定する。
まず問診と理学所見から、坐骨神経痛の原因を推定する。腰椎疾患を疑ったらMRIで原因検索を行う。
診察に関しては「問診ポイント 」を参考にしてください!
【各鑑別疾患の特徴】
腰椎椎間板ヘルニア坐位で痛みが増強する。SLRTが陽性(70°未満の挙上で坐骨神経痛が誘発または増強する)深部反射、知覚障害の領域、筋力低下が認められる筋――から障害神経根を推定する。MRIで椎間板ヘルニアを確認する。
腰部脊柱管狭窄(症)立位や歩行で痛みが出現または増強する。しゃがみ込みや前屈で痛みが改善する。Kemp徴候が陽性深部反射、知覚障害の領域、筋力低下が認められる筋――から障害神経根を推定する。MRIで脊柱管狭窄を確認する。
梨状筋症候群殿部(梨状筋部分)の圧痛を認める。SLRTと同様に下肢を挙上し、下肢の内転や内旋を行うと痛みが誘発される。
梨状筋症候群:坐骨神経と梨状筋の関係、およびそれぞれの出現率
坐骨神経と梨状筋の関係を示す。最も多いのは、坐骨神経が1本で梨状筋の下を走行するタイプである。梨状筋により坐骨神経が圧迫を受け、炎症を惹起し、痛みを起こすと考えられている。
a:84.2%(坐骨神経が1本で梨状筋の下を走行するタイプ)b:11.7%(坐骨神経が2本で1本が梨状筋の下を走行し、もう1本は梨状筋を貫通するタイプ)c:3.3% (坐骨神経が2本で梨状筋の上下を走行するタイプ)d:0.8% (坐骨神経が1本で梨状筋を貫通するタイプ)
-参考文献-
・長総義弘ほか:腰痛・下肢痛・膝痛に関する疫学調査. 整・災外 1994;37:59-67
.・ Prevalence of lumbar spinal stenosis, using the diagnostic support tool, and correlated factors in Japan: a population-based study.J Orthop Sci. 2013 Nov;18(6):893-900. doi: 10.1007/s007・・・
・菊地臣一ほか:腰椎疾患における神経性間欠跛行―第2報 治療成績. 整形外科 1987;38:15-23.
・吉田宗人ほか:腰部脊柱管狭窄症の自然経過―平均11年の追跡調査―. MB Orthop 2004;17:43-48.
・ Drugs for relief of pain in patients with sciatica: systematic review and meta-analysis.BMJ. 2012 Feb 13;344:e497. Epub 2012 Feb 13.
・Traction for low back pain with or without sciatica: an updated systematic review within the framework of the Cochrane collaboration.Spine (Phila Pa 1976). 2006 Jun 15;31(14):1591-9. doi: ・・・
・今日の臨床サポート 矢吹省司 福島県立医科大学 整形外科