吉澤 遼馬
2月29日
目次
ラウンドショルダー
AKAとは
締まりの位置
緩みの位置
骨運動に伴う関節包内運動
凹凸の法則
凹面の法則
凸面の法則
AKAアプローチ法
胸鎖関節滑り法
肩鎖関節滑り法
肩甲上腕関節 下方滑り法
肩甲上腕関節 前後滑り法
肩甲上腕関節 離開法
筋膜アプローチ
SFAL
DFAL
ローテーショナルショルダーストレッチ1
ローテーショナルショルダーストレッチ2
フロアA
ラウンドショルダーとは主に肩甲上腕関節内旋、肩甲骨挙上、外転、外旋状態でスタックしてしまっている状態でこの状態は僧帽筋上部線維が常時収縮位になるため、肩こりや首の痛みにかなり影響します。
このご時世、自宅でのリモートワークが増えラウンドショルダーの方も急増していると思います。
リモートワークの影響で膝痛の方は減ってきましたが、肩こりや首の不快感を訴えてくるクライアントはかなり増えたと思います。
さぁラウンドショルダーの関連する関節は主に肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節と書きましたが、もちろん他にも影響する関節は存在します。
それは仙腸関節と胸椎&胸郭と肩鎖関節の3つです。
では実際にアプローチの内容に入る前にAKAとはなんぞやという方のためにAKAについて解説していこうと思います!!
AKAとは関節運動学アプローチ(arthrokinematic approach)と言って関節の位置と骨運動を用いて関節可動域の向上を狙う徒手療法です。
AKAで改善する要素は以下のものです。
・関節可動域の維持、向上
・協調性改善(関節原性障害)
関節には大きく2つの位置が存在し、緩みの位置と締まりの位置があります。緩みの位置は、外力が加わることにより容易に動揺してしまう関節の位置で、締まりの位置とは、外力が加わっても動揺しない強固な位置のことです。
関節面の相互の接触面積が広く、適合性が高く周囲の靱帯や関節包は緊張しているため、外力を加えても動揺することはない。締まりの位置は通常、その関節の可動域の最終域付近のことが多く、最終可動域付近は関節は機能的に安定しているため、その肢位を保つのに筋力を必要としない。
締まりの位置以外の関節の位置のことを緩みの位置と呼ぶ。締まりの位置とは逆に、関節相互の接触面積は狭く、関節の適合面は低い。この関節の位置の周囲の靭帯や関節包は緩むため、外力により動揺する。その中でも最も緩むポジションを最大緩みの位置(LLP:least-packed position)と呼びます。
骨運動に伴い、起こる関節面の運動は動く側の骨の関節面が凹面なのか凸面なのかで法則がある。これを凹凸の法則という。
構成運動において凹面を有する関節面が運動する場合凹面といい、凸面であれば凹凸の法則という。
凸面を有する骨が固定されて、その骨を凹面の関節面を持つ骨が滑る時、関節面は骨の運動方向と同じ方向に滑る。
凹面の関節の骨が固定され、凸面の骨がその関節の凹面を滑る時、関節面は骨の運動方向とは反対の方向へ滑る。
それではアプローチ法を紹介します。
今回アプローチするのは肩甲上腕関節と肩鎖関節、胸鎖関節になります。
今回用いるのは、滑り法と離開法を使用します。滑り法とは、最大の緩みの位置で関節を構成する関節面を引き離す。離開法は最大限に関節を緩め、関節を構成する骨の関節面を平行に反対方向に滑らせる。
それに滑り法にも離開法にも関節を動かす時間で強度が存在し、弱が0.5秒、強で1~2秒関節を動かす。
それではどうぞ!!
①仰向けでベットに寝てもらい、治療側の肘関節を90°曲げ前腕と手を腹部に乗せる
②片方の母指と示指で鎖骨内側端をつまみ、もう一方の手の母指と示指で胸骨の上端を持つ
③鎖骨内側端を頭側および尾側に動かす
①側臥位で寝てもらい、腹側(背側でも可)にたつ
②母指と示指で肩峰を前後から挟む
③もう一方の母指と示指で鎖骨外側端を前後から挟む
④鎖骨外側端を後方に押し出し、肩峰を前方に押す
⑤鎖骨外側端を前方に押し、肩峰を後方に押す
①仰向けでベットに寝てもらい、治療側にたつ
②上腕骨遠位端を持ち、肩関節を軽度外転させる
③もう一方の手の示指と中指の末節骨を上腕骨大結節の頭側にかける
④大結節を尾側に引っ張り、骨頭を引き下げる
①仰向けでベットに寝てもらい、治療側にたつ
②上腕骨遠位端を持ち、肩関節を軽度外転させる
③母指と示指で上腕骨頭を前後から挟む
④上腕骨頭を母指で後方、示指で前方に押す
①手を治療側の上腕骨近位端内側に当てる
②もう一方の手で上腕骨遠位支持する
③上腕骨近位端を外方に押し関節面を離開する
ここまでがAKAアプローチになります!
ただこれだけでは不十分です!!確かにAKAで可動域を改善することはできていますが、ラウンドショルダーをより改善するためにはAKAに組み合わせて筋膜へのアプローチと弱化筋へのアクティベートを行います。
その中でも今回はアナトミートレインを使ったストレッチと運動療法を紹介します!!
ラウンドショルダーの際に短縮傾向にあるアナトミートレインはスーパーフィシャルアームライン(SFAL)とディープフロントアームラインです!!
筋膜には多くの感覚受容器が存在し、その数は筋の10倍にもなると報告されています。
なので通常なら大胸筋は大胸筋単体で、小胸筋は小胸筋単体でリリースやストレッチを行うケースが多いですがそれでは効果があまりなく、すぐに元に戻ってしまいます。
ストレッチと筋膜リリースを比較した時、ストレッチは半日〜1日で柔軟性は元に戻ったが、筋膜リリースは1日以上柔軟性の向上があったという報告もいくつも上がっています。
なので筋にアプローチするのではなく、筋膜にアプローチしたストレッチを行う方が効果的なわけです。
以下にスーパーフィシャルアームラインとディープフロントアームラインの詳細を記載しておきますので、ご確認ください。
スーパーフィシャルアームライン(SFAL)は以下の流れで構成されています。
・鎖骨の内側3分の1
・肋軟骨
・胸腰筋膜
・大胸筋
・広背筋
・上腕骨内側縁
・内側筋間中隔
・上腕内側上顆
・手根屈筋群
・指の掌側面
ディープフロントアームラインは以下の流れで構成されています。
・第3・4・5・肋骨
・小胸筋
・鎖骨胸筋筋膜
・烏口突起
・上腕二頭筋
・橈骨粗面
・橈骨骨膜
・橈骨茎状突起
・外側側副靱帯
・母指球筋
・舟状骨
・大菱形骨
・母指外側
この流れを見れば2つのラインは大胸筋、小胸筋への繋がりが明確で、このラインが短縮傾向にあるとラウンドショルダーにかなり影響してくるのは容易に想像できますよね!!
①肩関節90°外転し、中指が後ろに向くように壁に手をつく
②肩甲骨が挙上しないように気をつけながら、身体を回旋させアームラインを伸張していく
③伸び感が出たらその位置で頸部を側屈させ、さらに伸張をかける
次はより、伸張率を高くして行う
①肩関節90°外転し、中指が下に向くように壁に手をつく
②肩甲骨が挙上しないように気をつけながら、身体を回旋させアームラインを伸張していく
③伸び感が出たらその位置で頸部を側屈させ、さらに伸張をかける
最後に行うトレーニングはフロアAという種目です。ここまでAKAで可動域を改善させ、筋膜がしっかり伸びる準備をし、筋膜の流れを元にをストレッチし、最後は弱化している筋を刺激して関節を調整します。
弱化している筋とは・・・
僧帽筋下部です!!
ラウンドショルダーの場合、僧帽筋上部が過活動になってしまい僧帽筋下部は伸張され肩甲骨下制とういう大事な機能を失ってしまっています。
ですので、可動域を回復し、筋膜を緩め、僧帽筋下部に刺激が入りやすいようにした状態でトレーニングしていきます。
①うつ伏せになり手を八の字におく
②顎を引き、チンタックをする
③肩甲骨を下制内転して上体を鳩尾あたりまで持ち上げてキープする
この際に注意すべきことは、あくまで僧帽筋下部に刺激を入れたいので、ハムストリングスに代償が出たり、脊柱立筋群で代償したりはNGです。
必ず僧帽筋下部だけでこの動作を行なってください。
以上がラウンドショルダーに対するAKAアプローチになります!!
いかがだったでしょうか?AKAアプローチだけでなく筋膜のアプローチも組み合わせることで効果も増大しますのでぜひ皆さんもチャレンジしてください!!
参考文献1.監訳坂井建雄/松村讓兒 プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系2.博田節夫/第二版AKA関節運動学的アプローチ博田法