吉澤 遼馬
2022年6月30日
最終更新: 2023年2月12日
今回の内容は"膝関節疾患に対するハイボルテージ"になります。
自分が現場で実際に行なっているやり方です。
物療に関してはエビデンスや文献が少なく、100%という答えがありません。そのため、今回の介入方法が絶対的とは思っておりません。日々試行錯誤している状態ですので、より効果的なアプローチなどがございましたらDMなどでご教授いただけると幸いです。
今回の内容をやってみて、ぜひフィードバックをしてください。
よりいいものをこのマガジンで作っていければと思いますのでよろしくお願いいたします!!!
目次
はじめに…
ハイボルテージの基礎理論
女性患者さんへの対応
禁忌
膝に影響する基本的な運動連鎖
1、膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)
2、腸脛靭帯炎(ランナー膝)
3、鷲足炎
4、オスグッド・シュラッター病
5、変形性膝関節症
その他の介入
おまけ
最後に
みなさんはハイボルトをどのようにお使いでしょうか?
✔️患部に当てる
✔️設定はそのまま
✔️パッドで流しっぱなし
このような使い方をされている方も多いのではないでしょうか?
もちろんそれでもある程度効果を出すことができます。
しかし、適切な設定、出力、場所で使用することで、その場でビフォーアフターを出せるほど明らかな結果を出すことができるのです。
もし、「ハイボルトであまり効果が実感できない」「当て方がわからない」
このような方は、この記事でそのイメージを払拭します。
”ハイボルテージ"は奥が深く、流し方、設定で全く違う成果を出します。
具体的に、本記事の内容を読んでいただければ
✔️電療が好きになる
✔️ハイボルトの基本的な使い方ができる
✔️状態に応じたハイボルトの使い方が理解できる
✔️狙いたい部位や効果を出すことができるようになる
✔️短い時間で最大の効果をだすことができるようになる
このような変化が生まれることになるはずです。
今回はお待ちかねの実践編です。
電療の理論、ハイボルトの理論を理解した上で施術することで自分で考えて設定や当て方を工夫することができるようになります!
では、やっていきましょう!
やり方やハウツーだけではなく、理論を理解していることが前提で出来ることがベストです。
以下のやり方は100%の成果を保証するものではないので、成果がうまく出ない時に理論が理解できていないと応用が効かなくなってしまい、結果として患者さんへの介入がうまくできなくなってしまいます。
ハイボルトだけでなく物療の施術は内容により、多少なりとも肌を露出して施術を行なわなければなりません。特に女性の患者さんの場合は配慮が必要だと思っております。その際に私自身が特に気をつけていることをお伝えさせていただきます。
施術はもちろん大切ですが、細かい気配りや配慮も患者さんの満足度の向上に繋がると思っております。
✔️カーテンは閉める
→肌が露出する際はカーテンを閉めます。施術を受ける患者さんへの配慮はもちろん、周りの患者さんの目にも配慮するためです。
こんな目で見られます。。。
周りの患者さんは見ていないようで結構見ていますよ。
✔️あらかじめ電気を流す場所を示す
→患者さんに場所を理解してもらいます。
個人的にこれがとても重要だと思っていて、初めての方はなにをされるのか全くわかりません。どこにどんな風に施術をするのかを明確に伝えることで、クレームの回避にもなりますし、患者さんの安心感も得ることができます。
例)
「今から、電気を流していくんですが肌に直接やらせていただきますので、この後少し服を捲らせていただきますね」
→肌を露出することの確認
「流す場所はこの辺りです」(上記写真のようなかたち)
→施術箇所の確認
※実際に私がやっている流れです。
✔️皮膚は極力露出しないようにする
→必要があればタオルを2枚使用して肌の露出を最低限にします。
同意をもらったからといって、がっつり肌を露出させるのは患者さんにとって好ましいことではありません(たぶん)。なので、肌の露出が最低限になるように、導子やプローブなどを当てたらタオルなどで極力肌を覆います。
もちろん超音波など完全に肌を覆えないものもありますので、それは部位や施術のやり方に応じて臨機応変に対応してください。
細かいかもしれませんが、私はかなり重要だと思っているので載せました。
何回か出てきていますが、物療を行う上で重要なので再度禁忌も載せておきます。
・不整脈、うっ血性心不全、心筋梗塞などの心疾患を有する患者の胸部
・心臓ペースメーカーを使用している人
・頸動脈洞における血圧上昇および心拍数増加
・mAレベルの刺激強度による経頭蓋刺激
・悪性腫瘍および転移性疾患
・金属突出部位
・幼児、認知症患者
・電気刺激に対して恐怖心の強い人
・妊娠中の子宮付近
・瘢痕の強い皮膚組織
・骨組織の周辺部
・電磁波過敏症
物療を行う上でまず学ぶべきだと思っているのがこの”禁忌”です。
施術をするうえで、まず絶対に悪化させてはいけないと思っています。悪化させないためには”なにをやってはいけないのか”を理解する必要があります。なので、まず物療をする上では禁忌から理解していただきたいです。
…前置きが長くなりましたが、膝の実践編やっていきましょう!
膝関節の典型的な上行性運動連鎖
膝関節の典型的な下行性運動連鎖
※全てをこのパターンに当てはめて介入するわけではありませんが、膝関節には運動連鎖によって影響が出ることがあることを理解していると介入しやすくなります。
ジャンプやダッシュなどによる膝関節の屈伸動作を頻繁に、かつ長時間にわたって行うことにより、膝蓋腱に繰り返しの過度な伸張ストレスがかかり、微小な損傷が腱線維に生じ、炎症などが起こる状態。
膝蓋靭帯炎は、浅層、深層、脂肪体の3種類に分類してアプローチします。
<膝蓋靭帯浅層>
アプローチ部位
①大腿四頭筋
→血流改善による筋スパズム改善
②大臀筋
→筋再教育
③患部
→疼痛コントロール
大腿四頭筋
【設定】
周波数 :5〜10Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :大腿直筋上
上記画像のように、大腿直筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
大臀筋
【設定】
周波数 :100Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :大臀筋起始部
上記画像のように、大臀筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
※画像が衣服の上からなのはご了承ください。
患部
【設定】
周波数 :150Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
プローブの場合は、上記画像のように膝蓋靱帯上にまっすぐ当てて通電します。
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:50μsec
時 間 :10分
パッドの場合は、上記画像のように患部を挟んで通電します。
<膝蓋靭帯深層>
アプローチ部位
①大腿筋膜張筋
→血流改善による筋スパズム改善
②患部
→疼痛コントロール
※上記の浅層2パターン(大腿四頭筋、大臀筋)もアプローチする。
大腿筋膜張筋
【設定】
周波数 :5Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :ASIS付近
上記画像のように、TFLにまっすぐ当てて通電します。
※痛みが強く出やすいので出力を上げすぎないでください。
※画像が衣服の上からなのはご了承ください。
患部
【設定】
周波数 :150Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
プローブの場合は、上記画像のように膝蓋靱帯を内側からえぐるようにして通電します。
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:50μsec
時 間 :10分
パッドの場合は、上記画像のように患部を挟んで通電します。
<膝蓋下脂肪体>
アプローチ部位
①患部
→疼痛コントロール
②患部
→疼痛コントロール(コンビネーション使用版)
※上記の大腿四頭筋&大臀筋or大腿筋膜張筋も必要であればアプローチする。
患部
【設定】
周波数 :150Hz
パルス幅:20μsec
時 間 :1分
プローブの場合は、上記画像のように膝蓋下脂肪体を下からえぐるようにして通電します。(左右共に)
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:10μsec
時 間 :10分
パッドの場合は、上記画像のように患部を挟んで通電します。
患部(コンビネーション版)
【HIV設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:10μsec
時 間 :5~6分
【US設定】
周波数:1MHz
Duty :100%
出力 :1.0W/㎠
個人的にはこちらのほうがおすすめですね。
ランニング動作などの膝の屈伸運動を繰り返すことによってITB深層にある脂肪体の圧迫刺激が起こり、疼痛が発生している状態。
アプローチ部位
①患部
→疼痛コントロール
②大腿筋膜張筋
→血流改善による筋スパズム改善
③中臀筋
→筋再教育
患部
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:50μsec
時 間 :10分
上記画像のように腸脛靱帯と脛骨粗面にパッドを貼って通電します。
大腿筋膜張筋
【設定】
周波数 :5Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :ASIS付近
上記画像のように、TFLにまっすぐ当てて通電します。
※痛みが強く出やすいので出力を上げすぎないでください。
※画像が衣服の上からなのはご了承ください。
中臀筋
【設定】
周波数 :100Hz
パルス幅:20μsec
時 間 :1分
アース :中臀筋起始部
上記画像のように、中臀筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
※画像が衣服の上からなのはご了承ください。
鷲足筋(半腱様筋、薄筋、縫工筋)腱、鷲足滑液包への繰り返しの摩擦・伸張ストレスによる炎症と疼痛が発生している状態。
原因筋の鑑別が重要です。
→縫工筋、薄筋、半腱様筋の各々トリガー筋鑑別テストをして精査することが最優先です。
※縫工筋の場合、伏在神経の絞扼による症状との鑑別が必要です。
2002.29.2_285_1.pdf250085 Bytes
ファイルダウンロードについて
ダウンロード
↑トリガー筋鑑別テストについて載っていますのでご参考程度に
アプローチ部位
①患部
→疼痛コントロール
②-a縫工筋
→血流改善による筋スパズム改善
②-b薄筋
→血流改善による筋スパズム改善
②-c半腱様筋
→血流改善による筋スパズム改善
③中臀筋
→筋再教育
患部
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:30μsec
時 間 :10分
上記画像のように鷲足の近位よりと脛骨粗面にパッドを貼って通電します。
縫工筋
【設定】
周波数 :5Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :縫工筋上
上記画像のように、縫工筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
薄筋
【設定】
周波数 :5Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :薄筋上
上記画像のように、薄筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
半腱様筋
【設定】
周波数 :5Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :内側ハム上
上記画像のように、内側ハムの近位にプローブを当てて通電します。
中臀筋
【設定】
周波数 :100Hz
パルス幅:20μsec
時 間 :1分
アース :中臀筋起始部
上記画像のように、中臀筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
※画像が衣服の上からなのはご了承ください。
小〜中学生の成長期に起こる大腿四頭筋牽引力による脛骨粗面骨端線のオーバーユース障害のこと。
アプローチ部位
①患部
→疼痛コントロール
②大腿直筋
→血流改善による筋スパズム改善
③ハムストリング
→血流改善による筋スパズム改善
④大臀筋
→筋再教育
患部
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:30μsec
時 間 :10分
上記画像のように患部(脛骨粗面付近)を挟んで通電します。
大腿四頭筋
【設定】
周波数 :5Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース :大腿直筋上
上記画像のように、大腿直筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
ハムストリング
【設定】
周波数 :30Hz〜80Hz スイーブ波形
パルス幅:50μsec
時 間 :10分
ハムの中央に大パッドを使用して近位、遠位で貼り付け通電します。
ハムはパッドで通電のほうが効率よく効果がでるのでこちらのやり方です。
※強く筋収縮が入ると逆効果になるので出力の強さは気持ちいい程度にしてください。
大臀筋
【設定】
周波数 :100Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アース : 大臀筋起始部
上記画像のように、大臀筋の筋腹にまっすぐ当てて通電します。
※画像が衣服の上からなのはご了承ください。
関節軟骨の進行性の変性病変を主体とした骨の変形性変化のこと。関節軟骨の変性・摩耗による荒廃と、関節縁の骨新生(骨棘)がみられる状態。
アプローチ部位
①患部-a
→疼痛コントロール
②患部-b
→可動域改善(疼痛コントロール)
患部-a
【設定】
周波数 :150Hz
パルス幅:20μsec
時 間 :1分
アース :内転筋上
プローブを内側裂隙に当てて、通電します。
患部-b
【設定】
周波数 :100〜200Hz スイーブ波形
パルス幅:10μsec
時 間 :10分
膝関節を挟むようにパッドを貼って、通電しながら膝関節を牽引しつつ屈曲、伸展を他動的に行います。
※出力は気持ちいい程度にしてください。
※OAの場合は可動域制限が強いことがありますので、屈曲、伸展の動作は無理のない範囲で行なってください。
OAは器質的な変形と疼痛が無関係なことがあります。
→慢性疼痛としたOAの場合もありますので、その場合はバイメカ的な介入が無効な可能性がありますので、スクリーニングをして適切な介入をする必要があります。
<破局的思考と恐怖回避思考>
スクリーニング方法
・PCS(Pain Catastrophizing Scale)
→カットオフ値:30点
・TSK(Tampa scale for kinesiophobia)
→カットオフ値:37点
※スクリーニングをしたのちに、破局的思考などが強いと判断された場合はバイメカ的な介入ではなく、「痛みの神経生理学的教育」や「マインドフルネス瞑想」が効果的というデータがあります。
その他、下行性疼痛抑制系の減弱や身体イメージの変容などが影響している場合もあります。
<シンスプリントへのハイボルト>
シンスプリントでここまで訴えるのは…いますかね…笑
【設定】
周波数 :150Hz
パルス幅:30μsec
時 間 :1分
アースは下腿内側遠位1/3付近、プローブは内果後方に当てて通電します。
【設定】
周波数 :100Hz
パルス幅:50μsec
時 間 :1分
アースは下腿三頭筋とアキレス腱の移行部付近、プローブは足底に当てて通電します。
その後、状態を確認して見てください。
楽になりました!!!!!笑
いかがでしたでしょうか?
ハイボルトの使い方を理解して、今後の治療の幅を広げていただければ幸いです。
自分の技術が上がることで、自信にもなります。また、患者さんにも新たなアプローチができることで満足度などを高めることもできます。
何度も言いますが、一番大切なのは"理論"です。
やり方だけでは型から外れた患者さんを救えなくなる可能性があります。
電療はもちろんですが、今後も施術するうえでの武器や新たな手立てを提供させていただきますのでよろしくお願いいたします。