吉澤 遼馬

2022年10月31日

ハイボルテージ実践編〜肩関節編〜

最終更新: 2023年8月27日

目次

  1. はじめに…

  2. 女性患者さんへの対応

  3. 禁忌

  4. 1、肩峰下滑液包炎

  5. 2、腱板断裂

  6. 3、肩関節内副運動の改善

  7. 4、凍結肩

  8. おまけ

  9. 最後に

はじめに…

みなさんはハイボルトをどのようにお使いでしょうか?

✔️患部に当てる
 
✔️設定はそのまま
 
✔️パッドで流しっぱなし

このような使い方をされている方も多いのではないでしょうか?

もちろんそれでもある程度効果を出すことができます。


 

しかし、適切な設定、出力、場所で使用することで、その場でビフォーアフターを出せるほど明らかな結果を出すことができるのです。


 


 

もし、「ハイボルトであまり効果が実感できない」「当て方がわからない」
 
このような方は、この記事でそのイメージを払拭します。


 

”ハイボルテージ"は奥が深く、流し方、設定で全く違う成果を出します。


 


 
具体的に、本記事の内容を読んでいただければ
 

✔️電療が好きになる
 
✔️ハイボルトの基本的な使い方ができる
 
✔️状態に応じたハイボルトの使い方が理解できる
 
✔️狙いたい部位や効果を出すことができるようになる
 
✔️短い時間で最大の効果をだすことができるようになる

このような変化が生まれることになるはずです。
 

今回は肩関節の実践編です。
 

電療の理論、ハイボルトの理論を理解した上で施術することで自分で考えて設定や当て方を工夫することができるようになります。
 

では、やっていきましょう!


 

女性患者さんへの対応

ハイボルトだけでなく物療の施術は内容により、多少なりとも肌を露出して施術を行なわなければなりません。特に女性の患者さんの場合は配慮が必要だと思っております。その際に私自身が特に気をつけていることをお伝えさせていただきます。

施術はもちろん大切ですが、細かい気配りや配慮も患者さんの満足度の向上に繋がると思っております。
 

何回か出てきている内容ですが、大切だと思っているのでご了承ください。


 

✔️カーテンは閉める
 
 →肌が露出する際はカーテンを閉めます。施術を受ける患者さんへの配慮はもちろん、周りの患者さんの目にも配慮するためです。

こんな目で見られます。。。

周りの患者さんは見ていないようで結構見ていますよ。
 


 

✔️あらかじめ電気を流す場所を示す
 
 →患者さんに場所を理解してもらいます。

個人的にこれがとても重要だと思っていて、初めての方はなにをされるのか全くわかりません。どこにどんな風に施術をするのかを明確に伝えることで、クレームの回避にもなりますし、患者さんの安心感も得ることができます。
 

例)
 
「今から、電気を流していくんですが肌に直接やらせていただきますので、この後少し服をまくらせていただきますね」
 
→肌を露出することの確認
 
「当てる場所はこの辺りです」(上記写真のようなかたち)
 
→施術箇所の確認
 

 
※実際に私がやっている流れです。
 


 

✔️皮膚は極力露出しないようにする
 
 →必要があればタオルを2枚使用して肌の露出を最低限にします。
 

同意をもらったからといって、がっつり肌を露出させるのは患者さんにとって好ましいことではないはずです。

肌の露出が最低限になるように、導子やプローブなどを当てたらタオルなどで極力肌を覆います。
 


 

禁忌

・不整脈、うっ血性心不全、心筋梗塞などの心疾患を有する患者の胸部
 
・心臓ペースメーカーを使用している人
 
・頸動脈洞における血圧上昇および心拍数増加
 
・mAレベルの刺激強度による経頭蓋刺激
 
・悪性腫瘍および転移性疾患
 
・金属突出部位
 
・幼児、認知症患者
 
・電気刺激に対して恐怖心の強い人
 
・妊娠中の子宮付近
 
・瘢痕の強い皮膚組織
 
・骨組織の周辺部
 
・電磁波過敏症
 

物療を行う上でまず学ぶべきだと思っているのがこの”禁忌”です。

施術をするうえで、まず絶対に悪化させてはいけないと思っています。悪化させないためには”なにをやってはいけないのか”を理解する必要があります。なので、まず物療をする上では禁忌から理解していただきたいです。


 

ここから肩関節についてやっていきましょう!


 

<転がり滑り運動>

球関節の疾患においては、
この2つ(転がり運動、すべり運動)の運動を理解し、
各動作でどのような関節運動が起きているのかイメージすることが特に重要です。


 

1、肩峰下滑液包炎

外転時、肩峰下滑液包が下りたためれるように活動することでGH関節の運動を円滑化している

肩峰下インピンジメントが原因となって発生する疾患です。

<夜間痛の発生機序>
 
滑液包には自由神経終末が密に分布している
 

 
炎症などの侵害刺激 ※外傷によるものが多い
 

 
脊髄反射による棘上筋、棘下筋、小胸筋の過剰な防御収縮
 

 
長時間の不良姿勢の持続
 

 
癒着による内圧上昇
 

 
夜間痛


 

ハイボルトによるアプローチ部位

患部
 
 →疼痛コントロール

患部

【設定】疼痛コントロール
 
周波数 :80〜200Hz スイーブ波形
 
パルス幅:10μsec
 
時 間 :1分

上記のように、パッド(アース)を僧帽筋上に貼り、プローブを肩峰下に当てて通電します。

少し強い程度の出力で流す。動作時痛がある場合は少し時間を長めにして、通電しながらゆっくり動作を行うと動作時痛の消失も早い印象です。


 


 


 

2、腱板断裂

腱板断裂の原因
 
①外傷性断裂(約20%)
 
 →転倒や交通事故
 
②変性断裂 (約80%)
 
 →内因性因子(血流低下、弾性変化、喫煙)
 
 →外因性因子(インピンジメント、大きなCSA、オーバーユース)
・Painful arcサイン :感度71%、特異度81%
 
・Drop armサイン :感度24%、特異度93%


 

ハイボルトによるアプローチ部位(保存療法の場合のみ)

①肩甲骨固定筋の強化
 
 →僧帽筋中部・下部の再教育
 
②腱板筋の強化
 
 →棘上筋、棘下筋、(肩甲下筋、小円筋)の再教育

僧帽筋中部・下部

【設定】再教育
 
周波数 :100Hz
 
パルス幅:50μsec
 
時 間 :1分
 

上記のように、パッド(アース)を僧帽筋外側に貼り、プローブを僧帽筋中部繊維に当てて通電します。
 

出力は感じる程度で、あげすぎないようにしてください。

下部線維も中部線維同様に下部線維めがけて通電します。


 


 

棘上筋・棘下筋

【設定】再教育
 
周波数 :100Hz
 
パルス幅:20μsec
 
時 間 :1分

上記のように、パッド(アース)を肩峰付近に貼り、プローブを棘上筋に当てて通電します。

こちらも出力は感じる程度で、あげすぎないようにしてください。

こちらも上記のように、パッド(アース)を肩峰付近に貼り、プローブを棘下筋に当てて通電します。
 

棘下筋は痛みを強く感じやすので、通電時は出力をあげすぎないようかつ、患者さんの訴えを聞きながら通電してください。


 


 


 

3、肩関節内副運動の改善

①前方への副運動
 
 →前方組織(肩甲下筋)の弱さ後方組織(三角筋後部)の強さ
 
②上方への副運動
 
 →三角筋中部の強さ棘上筋の弱さ
 
③内旋への副運動
 
 →内旋筋の強さ外旋筋の弱さ

この記事で副運動については詳しく表記しませんので、肩関節がきになる方にまずやってみてください。


 

ハイボルトによるアプローチ部位

①三角筋中部・後部、棘下筋、広背筋、大胸筋
 
 →血流増加による筋弛緩
 
②肩甲骨下筋
 
 →再教育
 
※棘上筋に関しては、前述したためここでは載せない。

三角筋中部・後部

【設定】筋ポンプ
 
周波数 :5〜10Hz
 
パルス幅:50μsec
 
時 間 :3分

上記のように、パッド(アース)を肩周囲付近貼り、プローブを三角筋後部線維にまっすぐに当てて通電します。
 

痛みは出づらいですが、電気による動きが出るので事前に伝えておくと理想です。

こちらも上記のように、パッド(アース)を肩付近に貼り、プローブを三角筋中部線維に当てて通電します。
 


 

広背筋

【設定】筋ポンプ
 
周波数 :5〜10Hz
 
パルス幅:20μsec
 
時 間 :3分

側臥位にて肩甲骨下角付近にパッド(アース)を貼り、肩関節外転をしてもらい、脇から広背筋を狙って通電します。

動きが強くでることがあるので事前に伝えることと、出力を上げすぎないことが大切ですね。


 

大胸筋

【設定】筋ポンプ
 
周波数 :5〜10Hz
 
パルス幅:30μsec
 
時 間 :3分

患者背臥位にて上記のように、パッド(アース)を大胸筋の内側付近に貼り、プローブを大胸筋にまっすぐに当てて通電します。

プローブを押し込むと痛みがでるので、押し込まないこと!!!


 

肩甲下筋

【設定】再教育
 
周波数 :100Hz
 
パルス幅:10μsec
 
時 間 :1分

患者背臥位にて上記のように、パッド(アース)を三角筋中部線維付近に貼り、プローブを肩甲下筋にまっすぐに当てて通電します。
 

肩甲骨の裏に当てるイメージなので、外転位をしっかり保持して体幹より肩甲骨を外に出す。

個人的に結構響きやすいので出力はあげすぎないようにしてください。


 

4、凍結肩

俗に言う、"四十肩、五十肩"と呼ばれているものです。

別の記事で書いたので、是非そちらをみてみてください!


 

おまけ

<後頭神経痛へのハイボルト>

【設定】
 
周波数 :150Hz
 
パルス幅:30μsec
 
時 間 :1分

パッド(アース)を頚椎に貼ります。

症状の出ている範囲にプローブをあてて通電します。

その後、状態を確認して見てください。
 

楽になりました!!!!!笑
 

最後に
 


 

いかがでしたでしょうか?
 


 

肩関節へのハイボルトの使い方を理解して、今後の肩への介入の幅を広げていただければ幸いです。

自分の技術が上がることで、自信にもなります。また、患者さんにも新たなアプローチができることで満足度などを高めることもできます。
 


 

何度も言いますが、一番大切なのは"理論"です。
 

もちろんハウツーができることも重要ですが、ハウツーだけの場合は改善が乏しいとそこからの介入の手立てがなくなってしまいます。

最悪、物療が使えないみたいな思考になりかねないので、理論がわかっていて損はないと思っています。


 

ハイボルトはもちろんですが、今後も施術するうえでの武器や新たな手立てを提供させていただきますのでよろしくお願いいたします。

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