吉澤 遼馬
2022年12月31日
今回は中足骨骨折に絞って記事を書きたいと思います。
それではみまさん中足骨に起こる骨折で圧倒的に頻度の高いのはどこだと思いますか?
これは答えは明確に出ていて、中足骨骨折の7割が第5中足骨骨折だと言われています。
特に急性骨折の場合、第5中足骨底に起こる骨折、剥離骨折、Jones骨折と言われているものが最も多いと言われています。
また疲労骨折の場合はMarch骨折とも呼ばれていて(行軍骨折)第2中足骨に最も頻繁に起こるとされています。
タイトルの通りJones骨折は日本と西洋では定義が違っています。
日本でジョーンズ骨折といえば第5中足骨疲労骨折で統一されていますが、今西洋ではDameron-Lowrence-Botte分類というゾーンで定義を使い分けているそうです。
上の図でいいいますと近位骨片が青い部分であるZoneⅠ(粗面)だと剥離骨折、赤い部分であるZoneⅡ(骨幹端から骨幹移行部)をJones骨折、黄色のZoneⅢ(粗面から遠位1.5〜2.0㎝)を疲労骨折と分類されています。
それぞれの骨折の発生率はZoneⅠで93%、ZoneⅡで4%、ZoneⅢで3%となっており、発生機序に関わらず、血流が乏しく回復が見込みにくい部位がJones骨折だと言われています。
急性骨折の特徴は受傷直後から出現する腫脹と局所の圧痛、自発痛及びクレピタスと言われています。
主観ではありますが実際クレピタスを感じることは非常に稀で、ZoneⅠ骨折の受傷機序である内返しに捻ったという証言と腫脹と圧痛で骨折の鑑別をすることができます。
内反捻挫と同じメカニズムなので、捻挫疑いの場合でも積極的な骨折の除外が必要になってきます。
捻ったら”ポキっ”って言った。。。。
と患者が言ったら真っ先に中足骨の剥離骨折を疑います。
また画像で患部の抽出を行う場合、副骨を骨折と誤診しないようにしましょう!
急性骨折の評価鑑別は比較的、外傷と対峙した時に頭の中にリスクとして入っていればそれほど難しくありませんが、疲労骨折ともなるとそうはいきません。
疲労骨折は何より所見が非常に曖昧でスポーツトレーナーやっている時、”この痛みをどう受け止めたらいいか”をしこたま考えた記憶があります。
訴える疼痛は鈍く、ひどい場合は中足骨か足趾にかけて広く出てくることもあり、荷重をかけていない夜間痛を訴えることもしばしばあります。
運動中は痛く、休息中は痛みを感じないことが多いため、選手や患者さんが自分たちの前に来る時には疲労骨折はかなり進行していたり、すでに仮骨が出現していたりすることもあります。
疼痛が鈍い時の判断が非常に難しく、骨折箇所に限局した疼痛に変化していくる場合も少なくありませんので、問診ではとにかく過去数週間で起きたトレーニングの変化を聞き出すことです。
靴の問題やトレーニングのボリューム、強度の変化は積極的に聞いていきましょう。
特にサイズの合わない靴、踵が極端にすり減った靴、踵の周囲が拉てしまってる靴は特に注意が必要です。
足部のバイオメカニクスを破綻させるきっかけになりますので必ずチェックしていきましょう。
初期段階レントゲンは70%の確率で偽陰性になることもあるため、エコー、MRIで最終判断する必要があるので、エコーをお持ちの先生方は積極的に観察することが望ましいです!
初期段階では疲労骨折を見逃しやすいという話をしましたが、ではどういう立ち回りをしていけばいいか?
現場にエコーがあればいいが、そういうわけにもいかないことが普通にあるし、むしろ多いかと思われます。
ここからは画像診断、圧痛、触診、観察以外の評価方法をエビデンスをもとに解説していきたいと思います。
音叉テストは振動させた音叉を遠位または近位の骨に置くテストです。
陽性基準は激しい痛みとします。
臨床的解釈は骨折の存在ですが、陽性基準で大切なのは疼痛が激しい場合を陽性とすると診断力は6倍に跳ね上がると言われているのでなんとなく痛いは陽性ではなく偽陽性くらいにとどめておくことが望ましいと思います。(過剰診断につながる)
音叉は128㎐で先端が重いものを使うと振動が長持ちするのでいいと思います。
どこに音叉を当てたかや、どこの骨折に対してかはばらつきはありますが参考になれば幸いです。
Lesho EP. Can tuning forks replace bone scans for identification of tibial stress fractures? Mil Med. 1997 Dec;162(12):802-3. PMID: 9433085.
脛骨前面に音叉を当てたところ被験者52人に対して感度75%、特異度67%と骨折の除外力はまあまあある感じです。
次に痛みの真上に音叉を当てた時です。
感度は89%、特異度44%となっていて、除外力をとしてはなかなか優秀です。患部の主張が強いと骨まで振動が伝わりにくく陰性になりやすいのかなというところです。
長骨圧迫テストはその名の通り、長管骨に対して有効なテストです。
方法はいたって単純で、骨幹部に軸圧をかけるだけ!少し捻りを加えたり、折ろうという気持ちでベンドを加えたりします。(折っちゃだめ)
エビデンスにおける根拠はないが陽性は痛みや異常可動性の触知です。陽性であれば骨折を疑うことができますが、クリニックに勤めていると偽関節の判断にも使えます。
たまに他院にて骨折に診断がくだっていたにも関わらずしっかりと治療をしないせいで疼痛残存を心配して来院される方もいらっしゃます。
そんな時ベンドしてみて、可動性があったら心の中で”あ〜〜”と思いと思いましょう。このテスト外見上明らかな変形があったらやらないようにしましょう。
https://vimeo.com/660672228/ddc2687e3e
このテストは場所によってタップ、つまり叩く場所が違います。
下腿のような長管骨の場合は患者の踵を下から、掌底や拳で打つように叩いて検査します。
また足趾の場合はそれぞれの足趾を指で弾いていきます。
疼痛を訴えたら陽性として骨折の可能性がグッと上がります。
https://vimeo.com/660672263/50580a39ac
スクイーズテストは中足骨の骨底部に骨折の疑いがある場合には中足骨骨頭を骨頭部に骨折の疑いがある場合には中足骨骨底部を握って圧縮する(第三中足骨に向かって圧迫する)
痛みを陽性として、臨床的解釈は骨折なのですが、モートン神経腫などの足趾間神経腫がある場合にも偽陽性となる場合が多いので解釈には慎重になりましょう。
今回はここまで!!