吉澤 遼馬
2022年9月2日
最終更新: 3月24日
目次
✅本記事 のコンテンツ内容
✅本記事を読むとこうなる
✅本記事は若手セラピスト向け
✅野球肘の鑑別
☑️外反ストレステスト
☑️moving valgus stress test
✅検査の信頼性
✅野球肘と筋膜の関係
✅筋膜の評価方法
✅筋膜への具体的なアプローチ方法
✅まとめ
✅最後に
・野球肘の鑑別方法
・機能解剖から考える具体的な筋膜アプローチ方法【動画付き】
・野球肘の症例に対して鑑別から治療戦略が立てられるようになる
・野球肘に対する筋膜アプローチを行えるようになる
下記のような方にはオススメできません。
× オススメできない人
・野球肘に対して臨床で鑑別を完璧に行えている方
・筋膜へのアプローチで結果を出せている方
・筋膜に否定的な方
本記事は、
『学校で筋膜の触り方とか教わってないし』
『野球肘の鑑別はできたら良いけどやり方が曖昧』
って若手セラピスト向けの内容です。
○ こんな悩みを持っている
・鑑別ができないから野球肘に対して治療戦略が立てられない
・どうアプローチしたらいいかわからない
上記の悩みを解決する記事を書きました。
野球肘は、
投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる疼痛性障害の総称
このように定義され、セラピストとしても臨床でよく経験する疾患の1つだと思います。
特に、レイトコッキング〜アクセラレーションにおける、肘外反ストレスによって肘の内側を痛める内側型が最も多いとされています。
投球動作では、前腕屈筋群・回内筋の強い筋収縮を要するため、
付着部である上腕骨内側上顆に牽引力が働きます。
この動作の繰り返しにより、
◆内側側副靭帯(MCL)損傷
◆回内・屈筋群筋筋膜炎
◆内側上顆骨端核障害
などが起こります。
MCL損傷に関しては直接的な肘外反ストレスによっても生じます。
今回は、この「内側型野球肘」と予測するための徒手検査をご紹介します。
ここから先は有料部分です
方法:
患者を座位とし、検者は検査側の肘関節を軽度屈曲させた状態で外反負荷を加える。
陽性判定:靭帯の緊張が感じられず、関節裂隙の開大を感じたら陽性とする。
方法:
①患者を背臥位とし、検査側の肘関節を完全屈曲させる。
②検者は肘関節に外反負荷をかけながら肘関節を伸展させる。
陽性判定:肘関節屈曲120~70°付近でMCL部分に疼痛が出現したら陽性とする。
さて、この2つの検査の信頼性が高いかというところですが、
moving valgus stress testに関しては、
投球障害による肘MCL損傷におけるmoving valgus stress testの
感度は100%、特異度は75%
引用文献
[1]O'Driscoll SW, Lawton RL, Smith AM:The"moving vulguss stress test"for medical collateral ligament tears of the elbow. Am J Sports Med 33:231-239. 2005
このように、感度がかなり高く報告されています。
つまり、
moving valgus stress testで陰性であれば
肘MCL損傷を否定できる可能性が高い。
と解釈できます。
ただ、特異度は75%であるため、陽性の場合は外反ストレステストと合わせて判断する必要があると言えます。
まず、野球肘の痛みのメカニズムを考えていきます。
基本的な考え方としては、
・前腕屈筋群の伸張性低下
・肘関節屈曲、伸展可動域制限
これらが痛み原因の一つとして考えられています。
具体的なメカニズムとしては、
前腕屈筋群の伸張性低下
↓
肘関節の可動域制限が生じる
↓
肘関節の骨性安定性が低下
↓
MCLにかかる外反ストレスが増強
このように考えられます。
つまり、内側型野球肘 または それに類似した痛みを改善させるためには、前腕屈筋群の適度な伸張性を獲得することが必要と言えます。
では、具体的にどこのポイントへアプローチすればいいのか?
それは、
です。
なぜこのポイントかというと、
橈側手根屈筋と長掌筋の起始部は、円回内筋と浅指屈筋の筋膜とともにAOLの上縁に沿って共同腱を形成している。
引用:工藤慎太郎 運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略 株式会社医学書院 2020 p76
つまり、橈側手根屈筋が浅指屈筋の筋膜を介して肘MCLと連結しているため、橈側手根屈筋が肘関節可動域制限に加えてMCLの直接的な伸張ストレスに影響すると解釈できます。
では、具体的にどのように評価を行えばいいのか?
それは、
ことです。
▼実際にはこんな感じ
皮膚の上を滑らすように丁寧に触っていくと
高密度化を起こしているケースでは、皮膚の動きまで悪く固まっているようなポイントがあります。
そこを少し圧迫してフリクションした時に痛みを訴えるような場合はそこの筋膜が硬くなっていると判断します。
では、これに対し実際にどういうアプローチをしていけばいいのか?
それは、
ことです。
▼実際にはこんな感じ
正しくアプローチできていると、
「ごりごりした感じ」と「痛み」があります。
その固さと痛みが取れるまで3分程度続けてみてください。
このアプローチは、深筋膜に対し機械的刺激と炎症反応による熱刺激を加えてヒアルロン酸の状態を変えるので、
かなりの痛みを伴います。
なので、アプローチはマイルドに行ってくださいね。
また、アプローチの目的と理由をしっかりと患者さんに説明し、同意を得てから介入してください。
さて、このアプローチを行ったら前後で外反ストレステストやmoving valgus stress testなどの症状の変化をみてみてください。
これで改善がみられるようであれば、数回に分けて介入を続けて症状の改善を目指します。(1回の介入で取り切るのは難しいです。)
・内側型野球肘の鑑別は
・外反ストレステスト
・moving valgus stress test
を複合的に用いる。
・内側型野球肘の改善には
腕橈骨筋と橈側手根屈筋の間
にアプローチすると有効なケースが多い。
◆野球肘に対する鑑別方法がよくわかってなかった
◆野球肘に対する治療戦略が立てられていなかった
こんなセラピストの方々のお役に立てたら嬉しいです。