吉澤 遼馬

2月29日

Patella fracture 膝蓋骨骨折

簡単にPatellaの解剖おさらい

膝蓋骨 Patella:膝関節の正面に位置する平坦な三角骨です。

大腿四頭筋の腱で発達する人体最大の種子骨,主に高密度の海綿骨組織で構成されており関節の前部を保護,大腿四頭筋を様々な角度で作用させることにより、大腿四頭筋のてこ比を高めています.大腿四頭筋は膝蓋腱の表面繊維で下に連続しています.後面は滑らかな楕円形のKnee joint上にあり、膝蓋骨裏面とPatella femora jointを形成している.

ちなみに私は,PF jointが大好きです!!

目次

  1. 膝蓋骨骨折

  2. 症例

  3. 固定

  4. 生活

  5. 糖病病

  6. Low intensity pulsed ultrasound

  7. エコー画像

  8. 惑わされやすい疾患

  9. まとめ

膝蓋骨骨折

受傷機転:交通外傷によるダッシュボードインジュリーや転倒により膝前面の腫脹,圧痛,歩行困難を呈する.

高エネルギー外傷では股関節,大腿骨,下腿骨,足根骨など,その他の骨折も合併します

骨折部が大きく離開していれば,陥凸を触知できることがある直達外力の場合は擦過傷を伴う症例もあります.また開放骨折となっている症例もあります

注意しましょう!!

ここからは私の経験した実症例からお話を進めていきます

症例

この患者はご家族さんに連れられて歩行して来院しました.

受傷機転:自転車にて走行中に突風が吹いた際に右へ転倒した際に右膝部を強打し受傷した60代女性 性格的には非積極的な方

本人曰く友人に先導されて地域活動的などよく参加されアクティビティ高いとのこと

本人は打ち身と思っていたみたいです

膝蓋骨周囲への圧痛・荷重時痛・熱感は著明紫斑は少なかったです

上図左右の外観を見たところ一目瞭然でした.

エコーではLow cho像が多く,上図のように骨連続性が途切れている画像が多く散見されました.この時点で私は,3パーツか4パーツに分かれていると疑い,観血療法などの可能性を考えました.すぐに対診していただいている整形外科へ紹介しました.

側面像では黄色円の部分が骨折線です

すこし下手ですが,Patellaと骨折線をマーキングしました

3パーツに分かれていますので、短軸で骨折線を追うようにプローブ走査を行いました

1週間後の側面像・正面像です.少し離開しているのが確認できます

基礎疾患としてDM(糖尿病)さらに肝機能,腎機能も悪いそのため骨癒合遅延因子盛りだくさんと対診医から指摘され「患者は医師から観血療法を促された」そうです.しかし患者は保存療法を強く希望され,当院での後療の運びとなりました

柔整師としては非常にうれしいお話ですが

骨折部の離開少しずつ増大してきており,さらに骨癒合遅延、当院でもLIPUSを用いていかに拘縮させないか早期に運動療法を開始させる分水嶺として最低週に1回エコーでの評価を行いました.エコー画像では主に離開部分の中,骨膜内より仮骨形成の確認
 
今回は,早期に運動療法を開始したいため,徒手的にPatella離開部を操作(離開)行い,エコー画像を動的に観察し骨折部がさらに離開するか骨膜内仮骨形成の判断する試みをしました.(経験必須でかなり危険ですマネしないように)

固定

固定は対診医と検討した結果患者が固定を管理しやすいニースプリント 伸展タイプを使用しました.
 

固定に関して私が交わした患者との約束
 

寝ている間以外は絶対着用寝ている際は,外すのはダメですが
 
固定の圧を緩める(下図のようにマジックテープに印をつけてことを許可しました.
 
これは,患者との信頼関係性格(Charactor)を考慮して決定しました

生活

最初期は転位の可能性が高いため

お風呂は許可しませんでした
 
そのためご家族の方に清拭で対応していただきました
 
清拭( Bed bath):入浴やシャワーを浴びることの出来ない患者の皮膚の汚れを落とす目的で体を拭いてあげる看護・介護行為

受傷2週後エコーで仮骨の程度をみて,シャワー入浴の許可をしました受傷3週後には入浴の許可をしました

糖病病

かかりつけの内科医にも連絡を取り
 
整骨院での治療の旨また,基礎疾患の程度や今後の食事・投薬に関してお話をさせて頂きました.
 
Hba1cは9%だったようで教育入院も検討されていたそうでした.
 
今回はお話の結果,内科主治医も往診していただけるとのこと
 
糖尿病の食事療法も指導いただけるとのこと
 
今回のように1月ほど往療が考慮される場合では
 
外傷以外の全身管理にも気を気張らないといけません.「骨折は治ったが,持病は悪化した何て最悪ですからね」

Low intensity pulsed ultrasound

治療としてはLIPUS(低出力パルス超音波)毎日照射していました.

エコー画像

受傷3・5・7週と同部位画像ではないが比較しましょう

離開部分が可動するか試していましたが
 
受傷3週には動く気配はありませんでした注意しながらシャワー許可し,他動的に屈曲を開始した.

受傷5週経過下からはいたるところで骨膜内から仮骨形成が確認できました
 
ニースプリントでの固定は受傷5週で除去しています
 
この時には往療は終了しており,通院されていました

受傷7週経過しました.
 
患者の固定管理などがうまくいき
 
さらには,ご自身で積極的に地域活動に参加されており、患者は膝関節屈曲制限なく無事治癒しています.

惑わされやすい疾患

先ほどのようなエコー画像(膝蓋骨骨折を疑う画像)であれば、よく惑される以下の2つに気を付けてください
 

有痛性分裂膝蓋骨(Bipartite patella)
 

分裂膝蓋骨は先天的に膝蓋骨が2つ以上に分裂しているもので,その大半は二分膝蓋骨である.多くは小さな骨片として存在する分裂膝蓋骨があっても無症状に経過することが多いがスポーツ活動や打撲などを契機として有痛性となることがある.大体四頭筋の外側付着部である膝蓋骨の外上方に分裂骨片を認める例が最も多く.次いで外側に多く見られる.
 

膝蓋骨の分裂部に一致して疼痛を訴える.好発年齢は12歳から16歳であることが多い運動中あるいは運動後に膝関節痛を訴える.
 
以下Saupe分類

エコー画像では骨折した部分の断端がとがっている画像とは違い分裂した骨片の辺縁部に丸みがあるのがが特徴です

Sinding-Larsen-johansson病
 

1921年に同時期にsinding,Larsen,Johanssonら三人の医師が発表したため,この命名になったそうです.

膝蓋靱帯が付着する膝蓋骨尖に発生し,膝蓋靱帯の牽引ストレスが原因でおこるスポーツ障害のこと好発年齢は11歳とされています.

私の経験から動作時痛,症状だけ聞くとオスグッドやジャンパーニーなど,誤診しやすいように思われます

私の見分け方として
 
・症状は軽度ながら長期的に疼痛が続いており,ある受傷機転を境に疼痛,運動痛が著明になります.
 
圧痛部位が著明であり膝蓋骨尖の一点である.エコーでは,膝蓋骨尖部Low cho像が骨不正像周囲に存在
 
さらに膝蓋腱の肥厚(Low cho像)も確認できます.

骨片があっても、成長過程で骨化して、痛みも消失します。

同年齢に膝蓋骨で痛む疾患には分裂膝蓋骨やSinding-Larsen-johansson病がありますが、圧痛部位が違うので、容易に判断ができます。

だがしかし!!

「人はよく見えていると,だんだんそれしか見えなくなるものです」

なぜならエコーというフィルターを通して画像だけみてしまうと「折れているのでは?」誤診につながります

それが患者にいらぬ誤解や焦燥感,また患者家族で大騒動になったりします最悪なのは患者からの信頼も失墜します.

その際は,落ち着いて患者をよく観察して対応してください

対診した際に,症状~のため,分裂膝蓋骨(○型)を疑いますなど紹介状などに判断した理由を添えて報告書でご自身の判断との答え合わせをしていってくださいやり取りを重ねるごとに,対診医からの評価や自身の観察力が上昇します.

まとめ

今回は私の経験した症例報告でした

今回は対診医は観血療法を指示したが,患者の強い希望があったため,観血療法は選択せず,細かい工夫して往療,管理した結果タマタマ上手くいきました

SNSが普及した現在ではFACE to FACEの場面が非常に少なくなっており顔が見えない相手に身をゆだねる事が普通になってきました

私は柔道整復師が外傷をみて王道を生き抜くためには、温故知新ですが「FACE to FACE」がこれから有利に働くと思っています

顔の見えない相手より顔が見える相手のほうが安心できます

その中で整骨院として,いかに工夫を凝らし地域に密着私は「患者にどこまで寄り添えるか!」大事だと考えています.

この記事を購読されている皆様には無用なお話かもしれません

さいごまでご精読ありがとうございました.

参考文献教えて! 救急 整形外科疾患のミカタ〜初期診療の見逃し回避から適切なコンサルテーションまで:斉藤 究柔道整復学・理論編改訂第6版

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